知ってる?<4> パラリンピックの競技③

パラリンピックを知る連載3回目です。

最終回は「オリンピックと同じ競技」をお伝えします 🙂 

オリンピックと同じ競技も開催されます。その数13競技!!

・ボート

   

 パラリンピックのボート競技は、2008年北京大会から正式競技となっています。

 

肢体不自由、視覚障害を持つ選手が対象となるボートですが、レースの距離が昨年のルール変更により、1,000メートルからオリンピック同様の2,000メートルの直線レーンになりました。勝敗はボートの先端がゴールラインに到達した順番で順位を決定するようになっています。

 

この競技では障害のクラスごとに出場種目が決まっており

・男女別のシングルスカル(1人乗り)

⇒下肢障害で体幹が効かないPR1クラスの選手が出場する

・男女ペアで行うダブルスカル(2人乗り)

⇒下肢障害で体幹が効くPR2クラスの選手が出場する

・男女2人ずつと舵手(だしゅ)1人のチームで行われる舵手つきフォア(5人乗り)

⇒上下肢障害や視覚障害のPR3クラスの選手が出場する

3種目4競技が実施される予定です。

 

シングルスカルは、固定された座席の背もたれに身体をベルトで固定させて漕ぐため、腕と肩の力のみでゴールを目指さなくてはなりません。そのため、シングルは個人個人の身体能力が勝敗を分ける、キーポイントになるでしょう。

 

ダブルスカルは、座席は固定されていますが背もたれは無いため体幹を使って漕ぐことができるのが特徴です。ですが、2人でタイミングを合わせる難しさがあります。

 

舵手つきフォアは、座席がスライドするボートを使って漕ぎます。膝を屈伸させる動作で漕ぎますが舵手の号令に従って、4人で呼吸を合わせて漕ぐため、5人のチームワークが速度を上げるには重要となります。

 

ダブルスカルと舵手つきフォアの2つにおいては、息の合ったチームワークが見どころです。

 

・アーチェリー

 パラリンピックの歴史の始まりはアーチェリーから始まっています。

 

アーチェリーの歴史は、狩りや闘いの道具として弓矢が使われていた時代にまで遡ることができますが、スポーツとして本格的に行われるようになったのは1600年頃と言われています。

 

 アーチェリーが障害者スポーツに取り入れられるようになったのは、1948年医師のルードウィッヒ・グッドマン博士の提唱によって、第二次世界大戦で負傷した兵士などの患者のリハビリの一環として始まったことがきっかけでした。また、パラリンピックという名称になるまでの過程にもアーチェリーは関わってきました。

 

1948年にストーク・マンデビル病院で車いすのアーチェリー大会が行われたのですが、この病院で行われた大会は、後にストーク・マンデビル競技大会と言われる様になりました。これがパラリンピックの発祥と言われています。

 

上記のストーク・マンデビル競技大会では参加者はたった16人ほどしかいなかったそうですが、1952年には国際大会が開かれるまでになりました。そして1964年の東京大会で名称を「パラリンピック」と改め、過去(1960)にローマで行われた「第九回ストーク・マンデビル競技大会」を第1回パラリンピックとし、現在では16回目になります。

 

アーチェリーは、離れた的に向かって矢を放ち、その得点を競い合う競技です。

 

男女3種目ずつ個別で行う個人戦(リカーブ、コンパウンド、W1)と男女ペアになって競うチーム戦(リカーブ、コンパウンド、W1)があり、障害の種類や程度に応じて用具を工夫することも認められています。使用する弓は2種類あり、1つはオリンピック競技でも使用される一般的な弓「リカーブ」と、もう1つは弦を引く力が弱くても矢を放てるように先端に滑車がついた「コンパウンド」があります。

 

障害の種類や程度に応じて、

W1・・・四肢まひなどの障害・車いすを使用 (重度)

W2・・・下半身のまひなど・車いすを使用 (中度)

ST・・・立位、もしくはいすに座って競技をする (軽度)

の3つのクラスに分かれて競技を行います。

的までの距離は、リカーブ部門では70m、コンパウンド部門では50mとなっています。

 

主に屋外で行われる競技のため、選手たちが風や雨などの条件を緻密に計算しながら集中して矢を放つ、その緊張感は見る人を圧倒させるものがあるでしょう。

 

各選手の工夫を凝らした撃ち方と見事に的を射抜く光景に注目です!

 

・カヌー

 カヌーは2016年のリオデジャネイロ大会からパラリンピックの正式競技となりました。

カヌーはボートのようにオールを使って後ろに進むのではなく、パドルを漕いで前向きに進む小舟で、スピード感あふれる競技です。

 

出場する選手は脊髄損傷や切断など下肢に障害のある選手で、

L1クラス(重度)・・・体感の機能がなく、胴体を動かすことが困難なため、肩と腕だけで漕ぐ

L2クラス(中度)・・・下肢で踏ん張ることは困難だが、胴体や腕を使って漕ぐ

L3クラス(軽度)・・・脚、胴体、腕、腰を使って踏ん張る、漕ぐ

の3つのクラスに分かれて競技を行います。

 

使用する艇は競技用カヤックと、片側にアウトリガー(浮力体)のついた競技用ヴァーの2種類で、カヤックを表す「K」またはヴァーを表す「V」をクラスの前につけて表記する(例:カヤックのL1クラスは「KL1」)。

 

カヤックは、オリンピックで使用されるものと同じような形状で、長さ520㎝、最小幅が50㎝、最小重量12㎏のものを使用します。舟の両側に水をとらえるブレード(水かき)のついたパドルを左右交互に漕いで進みます。

 

それと比べて、ヴァーはカヤックよりも長く、全長7メートル30㎝以内、最小重量13(浮き具含めて)を使用します。舟本体の横にバランスを取るための浮き具(アウトリガー)がついていて、左右どちらか片方のみを漕ぎながら進みます。

パラリンピックでは8(1艇に1人乗る)が一斉にスタートして200mの直線コースを漕ぎ、着順を競い合います。

 

・陸上競技

 パラリンピックで最も参加人数、種目が多く、連日多くの観客を集める陸上競技は、車いすや義足、視覚障害、知的障害など、さまざまな障害のある選手が出場します。そのため、障害の種類や程度によって細かくクラス分けがされ、選手はクラスごとに競技を行います。

 

クラス分けの表記はアルファベットと数字で表されます。

T(トラック競技・・・100m走からマラソン競技など)

F(フィールド競技・・・投てき競技、やり投げ、砲丸投げなど)の2つがあります。

 

数字は10番台~60番台まであり、2桁目の数字は、障害の種類や競技形式を表していて、1桁目の数字は、障害の程度の軽重を表しています。競技種目によって09まで振り当てられます。数字が小さいほど、障害の程度は重くなるとのことです。

 

11~12番台は「コーラー」や「併走者」が付く視覚障害者、13は弱視者が該当します。20番台は知的障害者で、3034番台は車いすを使用する脳性麻痺のある競技者、3538番台は脳性麻痺でも立位で競技ができる選手となっています。

 

続けて、4047番台は、低身長または四肢切断のある競技者(義足未使用)、機能障害のある立位競技者、5154番台は、下半身及び上半身に障害がある競技者となっています。5557番台は下半身のみ障害がある競技者で、車いすや投てき台を使用して競技を行います。6164番台は、切断などで義足などを使用する競技者が該当する番号です。

※例としては、T11・・・トラック競技で全盲の視覚障害があり、「併走者」が付く競技者となります。

 

種目は、

短距離走(100メートル、200メートル、400メートル走)

中距離走(800メートル走、1500メートル走、5000メートル走)

100×400リレー

マラソン

走り幅跳び

走り高跳び

投てき種目(こん棒投げ、円盤投げ、やり投げ、砲丸投げ)

があります。

 

基本的には一般の陸上競技と同じルールが用いられますが、障害に応じて一部のルールが変更、もしくは特別に用具の使用を認めています。

 

例えば、車いす競技では、「レーサー」と呼ばれる軽量な専用車いすを使用することが認められている他、下肢を切断した選手はスポーツ用に開発されたカーボンファイバー製の義足を装着して競技に参加することがOKになっています。また、単独で走ることのできる弱視以外の視覚障害の選手は「ガイドランナー」と呼ばれる伴走者とともに走り、跳躍・投てき種目では「コーラー(手を叩いて音で選手に知らせる人)」による指示を頼りに競技を行うことが認められているなど、障害の特性に合わせた用具を使いこなすアスリートたちにぜひ注目してみてください!

 

・バドミントン

 バドミントンは、東京大会2020年で初めてパラリンピックの正式競技となりますが、そのルールは概ねオリンピックと同じで、シングルス戦とダブルス戦があり、1ゲーム21点方式で3ゲーム行い、2ゲーム先取した選手が勝利となります。

 

ただし、障害の程度に応じて2つのカテゴリー(立位、車いす)に分かれていて、さらに障害の度合いによって6つのクラスに分けて、シングルス(男子・女子)、ダブルス(男子・女子)、混合ダブルスを行います。

 

また、クラスによってコートの広さが異なり、車いすのシングルスではコートの半分を使えるなど、障害の種類や程度に応じたコートの広さで試合が行われるのが特徴的です。

 

・テコンドー

 パラテコンドーは、2009年に初の世界選手権が実施され、今回の2020年東京大会からパラリンピックの正式競技に採用された新しい競技です。今大会では上肢の切断や機能障害のある選手が出場し、種目はキョルギ(組手)のみが実施されます。

 

腕の切断部分など障害の程度によって4つのクラス(K4144)に分けられ、男女それぞれ体重別で競技が行われることが特徴です。

 

パラリンピックのテコンドーでは、ルールはおおむね健常者テコンドーと同じで1試合2分間を1ラウンドとして計3ラウンド行い、ポイント数を競う「ポイント制」で勝敗を決めます。3ラウンド終了時点で同点の場合は、時間内に1点先取した選手が勝ちとなります。もし、その時間内に勝敗が決まらない場合は、主審のジャッジにより勝敗が決まるとのことです。

 

ポイントは、決まった蹴り技によって変動し、通常の有効な蹴りは2点、180度回転が加わった後ろ蹴りは3点、360度回転による蹴りは4点となります。

試合中の攻撃は選手の着用するプロテクターに対してのみ蹴り技が可能(蹴り技のみがポイントになり、手での攻撃はポイントにはならない)で、パラテコンドー独自のルールとして、頭への攻撃が禁止されています。

相手のプロテクターに見事にヒットする華麗な足技や突きは必見です!

 

・自転車

 1984年のニューヨーク・エイルズベリー大会にて正式競技となった自転車競技は、一般の自転車競技とほぼ同様に、ロードレースとトラックレースがあり、それぞれタイムまたは着順を競う競技です。

 

競技には切断、脳性まひ、視覚障害などの選手が参加し、それぞれの特性に応じた自転車で競技を行います。(障害によっては、ペダルと義足が固定できるように改良することが認められています。)(選手によっては一般的な競技用自転車を使用して競技に参加する方もいるかもしれません)

 

例えば、切断、脳性まひなどの選手は、通常の2輪自転車か、もしくは体幹のバランスが悪い選手(障害の重い選手)の場合はバランスの取りやすい3輪自転車などを使用したり、視覚障害の選手は、前に「パイロット(目見える)」が乗り、後ろに視覚障害の選手が乗る2人乗り用のタンデム自転車で競技に参加したり、下肢障害のある選手は、上肢だけで車輪を回すことができるハンドサイクルを使用することができます。(クラスはロードのみ)

 

パラリンピックの自転車競技は、屋外を走るため天候や道路の状況も勝負の行方を大きく左右します。そのような状況下でも、選手たちの鍛え上げられた脚力から生まれるスピードや巧みなコーナリング、周りの選手たちとの駆け引きなどは衰えることはありません。

 

・射撃

 1976年のトロント大会から正式競技として行われてきた射撃は、ライフルまたはピストルで決められた弾数を撃ち、その得点を競い合う競技です。

 

クラス分けは、射撃選手としての機能に基づいて分けられ、

SH1・・・上肢でライフルを保持して射撃、と

SH2・・・上肢の障害のため、支持スタンドを使ってライフルを保持して射撃

2つのクラスに分かれて競技が行われます。

銃の種類や射撃姿勢によって、男女別3種目と混合 7種目の計13種目があります。

 

射撃姿勢(撃ち方)

立って撃つ「立射(りっしゃ)

うつ伏せで撃つ「伏射(ふくしゃ)

片膝を立てて撃つ「膝射(しっしゃ)」があります。

 

ただし、車椅子の選手は、立射を車椅子に座った状態で、伏射をテーブルに両肘をついた状態で、膝射はテーブルに片肘をついた状態で撃つなど、障害の程度に合わせて撃てるように配慮がなされています。

 

競技を行うにあたって、標的との距離は、種目によって50m25m10mに分かれています。1発の満点は10点で、満点を取るには的の中心にある直径わずか0.5mmの範囲に命中させる必要があります。中心からのわずかなずれで順位が大きく入れ替わるため、ひとつのミスが勝敗を分ける、非常に繊細かつ高い集中力を必要とする競技です。

 

選手たちの繊細かつ強靭な精神、肉体から育まれる独特の緊張感と、1分1秒ごとに変わってくる劇的な試合展開が最大の見どころです。

 

・柔道

 視覚障害のある選手が対象の柔道は、障害の程度別にクラス分けはされておらず、オリンピックと同じように、体重別に試合が行われます。男子は7階級、女子は6階級に分かれていますが、例外として視覚障害の程度が異なる選手の対戦もあります。

 

ルールも、他の競技と同様に基本的には通常の競技とほぼ同じルールを適用していますが、視覚障害のある選手が行うことを考慮して一部のルールは変更されています。

 

例えば、試合を開始するときは最初から互いに相手の襟と袖を持ち、組み合った状態で主審が「はじめ」の合図をしてから始めることが認められています。また試合中に2人の選手が離れたときは主審が「まて」を宣告して、試合開始の位置で組み直すことが決められており、特別に設けられたルールが多数あります。

 

両者の息づかいが聞こえるほどの緊張感の中で、2人の選手が互いに試行錯誤しながら技を繰り出す姿は、圧倒されるものがあります。

 

・水泳

 日本がパラリンピックでメダルを多く獲得してきた競技と言えば水泳です!選手たちの力強くスピーディーな泳ぎに圧倒されることでしょう。パラリンピックの水泳では、機能障害や、視覚障害、知的障害などの選手が活躍していて、オリンピックのような飛込みや水球等は行わず、競泳のみの競技となっています。

 

選手は障害の種類や程度、運動機能によってクラス分けされおり、クラスごとに競技を行ってタイムを競い合います。

 

基本的にはオリンピックと同じ一般の競泳競技規則に基づいて行われますが、障害の種類や程度によって一部の規則が変更されています。

例えば、下肢に障害のある選手は飛び込みが難しいため、水中からのスタートが認められている他、視覚障害のある選手がターンなどをする際は、コーチがタッピングバー(合図棒)で選手の身体に触れて、壁が接近していることを知らせることが認められています。

 

・卓球

 車いすや立位の肢体不自由者、知的障害の選手が対象の卓球は、一般的な卓球の競技規則に基づいて準じて行われますが、障害の種類や程度を考慮して一部の規則は変更されています。

例えば、障害によって正規トスが困難な選手の場合は、一度自分のコートにボールを落としてからサーブを打つことが認められているなど、特別なルールが設けられています。

 

競技は男女別に個人戦と団体戦があり、選手は障害の種類や程度、運動機能によってクラス分けがされ、クラスごとに競技を行います。

 

クラス分けは、

1〜5が車いす選手

6〜10が立位の選手、

11が知的障害選手となっており、

個人戦では男子が11クラス、女子が10クラスあります。

団体戦は、男子がクラス1-234-56-789-106つのクラス、女子はクラス1-34-56-89-104つのクラスが行われます。

 

パラリンピックの卓球に出場する選手たちは、世界ランキングの上位にランクインしており、試合中は珠が時速100km以上という目にも止まらぬ速さで飛んでくるそうです。そんな速いボールを見事な反射神経で打ち返す選手たちのスピード感や迫力ある試合が卓球の見どころではないでしょうか。

 

・トライアスロン

 トライアスロンは、2016年に行われたリオデジャネイロ大会にてパラリンピックの正式競技として加わった競技です。用具を駆使しながら、スイム(水泳0.75km)、バイク(自転車ロードレース20km)、ラン(長距離走5km)の3種目を連続して行い、その合計タイムを競います。

 

3種目それぞれの距離は、オリンピックで実施されているスタンダード・ディスタンスの半分の距離となっています。

 

競技はスイム、バイク、ランの順に行われますが、スイムからバイク、バイクからランへの移り変わる過程で、ウェットスーツの脱衣や車いすへの乗り降りなどを公認支援者(ハンドラー)のサポートを受けて行うことができるのが通常のトライアスロンとは異なります。また、座位・立位・視覚障害の選手が出場しますが障害の種類と程度によってクラス分けがされており、

 

PT1・・・シッティング:競技用車いすの使用等

PT2~4・・・スタンディング:義足の使用等

PT5・・・ブラインド:視覚障害のある選手と同性のガイド1人が伴走等

5つの区分があります。

 

パラトライアスロンでは、車いす選手がランをする際は車いすレーサーを使用する他、視覚障害選手はガイドと一緒に競技を行い、自転車は二人乗りで競技を行うなど、それぞれの選手の障害に合わせた特別な用具を使用した光景を見ることができます。

 

パラトライアスロンを見て、障害のある方たちが使用している用具を調べてみると新たな発見が生まれてきそうですね。

 

・馬術

 パラリンピックで行われる馬術は、上下肢障害などの選手が人馬一体となり、演技の正確性と芸術性を男女混合で競い合う競技です。

 

種目は規定演技を行う「チャンピオンシップ テスト」と、選手それぞれが選んだ楽曲に合わせて演技を組み合わせていく「フリースタイル テスト」の2つがあります。

 

これら2つの種目は障害の程度に応じて5つのグレードに分かれていて、Ⅰ(最も重い)・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ(最も軽い)となっています。この5つのグレードそれぞれで競技を行い、順位を決定するという流れになっているのです。勝敗は、審判が運動項目ごとに10点満点で採点し、その合計得点(パーセンテージで表示)で決まるようになっています。

 

この競技では障害に応じて各選手が工夫を凝らした手綱や鞍などの用具を使って演技をする姿を見ることができます。また、人と馬が共存し一体となって華麗な演技を披露する光景も見どころでしょう。

 

 

3回にわたってパラリンピックの競技をお伝えしましたが、いかがでしたか?

皆さんパラリンピックも熱い応援お願いします! 🙂